2026-04-25
広告費で患者さんを1人獲得するコストは、いくらですか?——クリニックの集患コスト比較
「広告を出しているから、患者さんは来ている」は正しいか
多くのクリニックがGoogle広告やリスティング広告を活用しています。「検索したらうちのクリニックが出てくる」という状態を維持するために、毎月一定の広告費を支払い続けている院長も少なくありません。
広告は確かに効果があります。ただ、費用対効果を正確に計算している院長は、意外と少ないのではないでしょうか。
ここでは、広告費で新患を1人獲得するコストを具体的に計算し、保険診療の診療報酬と比較してみます。さらに、Webサイトへの投資と並べることで、集患にかかるコストの全体像を整理します。
広告費で新患1人を獲得するコストを計算する
Google広告の場合、医療機関が出稿するキーワードのクリック単価は、科目や地域によって異なりますが、一般的に300〜800円/クリック程度です(「内科 近く」「皮膚科 予約」などの地域系キーワードで300〜500円、「白内障 手術」「レーシック」などの専門性の高いキーワードでは800円を超えることもあります)。
仮にクリック単価を500円として、広告をクリックした方が実際に予約・来院する割合(転換率)を3%とすると、計算はこうなります。
新患1人獲得コスト = クリック単価 ÷ 転換率
= 500円 ÷ 0.03
≈ 16,700円
転換率が2%であれば25,000円、1%まで下がれば50,000円になります。「広告をクリックして、実際に来院する」という確率は、思ったより低いケースが多いです。
保険診療の仕組みと、クリニックが受け取る金額
次に、患者さんが診察を受けた場合、クリニックが受け取る金額を確認します。
保険診療では、患者さんが窓口で支払う金額は診療報酬全体の3割(70歳以上は1〜2割)です。残りの7割は健康保険組合や国保から後日クリニックに支払われます。患者さんが「3,000円払った」としても、クリニックが受け取る診療報酬の総額は約10,000円ということです。
一般的な保険診療の初診における診療報酬は、科目・検査・処方内容によって大きく異なりますが、参考として以下のような水準です。
| 診療内容の例 | 診療報酬(目安) | 患者負担(3割) |
|---|---|---|
| 内科 初診(問診・基本処置のみ) | 約5,000〜8,000円 | 約1,500〜2,400円 |
| 小児科 初診(問診・検査含む) | 約6,000〜10,000円 | 約1,800〜3,000円 |
| 皮膚科 初診(外用薬処方まで) | 約5,000〜9,000円 | 約1,500〜2,700円 |
| 眼科 初診(視力・眼圧検査含む) | 約6,000〜12,000円 | 約1,800〜3,600円 |
(※上記はあくまで参考目安です。実際の点数は診療行為の組み合わせによって変動します)
初診の診療報酬と広告費を並べると
先ほど計算した「新患1人あたりの広告獲得コスト」と、「初診の診療報酬」を並べてみます。
- 広告費による新患1人の獲得コスト:約15,000〜25,000円(転換率2〜3%の場合)
- 一般的な保険診療の初診診療報酬:約5,000〜12,000円
数字だけ見ると、初診1回の診療報酬よりも、広告での獲得コストの方が高くなるケースがあることが分かります。
もちろん、患者さんが継続的に通院してくれれば、2回目・3回目の診療報酬が積み上がり、広告費の元は取れます。ただし、「初診でどれだけの費用をかけて患者さんを呼んでいるか」を把握せずに広告を続けることは、収支の見えにくい状態を作ることになります。
「止めたら止まる」広告費の本質的な問題
広告費の本質的な課題は、コストの多寡よりも、**「広告を止めると集患も止まる」**という構造にあります。
毎月20万円の広告費を5年間払い続けると、累計1,200万円です。しかしその費用は何も残りません。広告を止めた翌月から、検索結果への露出はゼロになります。
一方、Webサイトは一度制作すれば、継続的に情報を発信し続ける「資産」として機能します。SEOやMEO(Googleマップ対策)の効果が積み上がれば、広告に頼らない集患の柱を少しずつ育てることができます。すぐに広告を不要にするものではありませんが、長期的に広告への依存度を下げていく起点になります。
Webサイトの質が上がると、広告の費用対効果も上がる
広告費を削減する、という話ではありません。むしろ、広告を出し続けるからこそ、Webサイトの質が重要になります。
広告をクリックした患者さんが最初に見るのは、クリニックのWebサイトです。そこで「情報が探しにくい」「古くて信頼できなさそう」と感じれば、すぐに閉じられてしまいます。広告費はクリックに対して発生するため、来院につながらないクリックが増えるほど、獲得コストは跳ね上がります。
逆に、サイトの転換率(クリックから予約・来院につながる割合)が上がれば、同じ広告費でも獲得できる新患数が増えます。先ほどの計算式で見ると、転換率の変化は獲得コストに直結します。
| 転換率 | 新患1人の獲得コスト(クリック単価500円の場合) |
|---|---|
| 1% | 50,000円 |
| 3% | 16,700円 |
| 5% | 10,000円 |
転換率が3%から5%に改善するだけで、獲得コストは約4割下がります。月に20万円の広告費をかけているクリニックであれば、同じ予算でより多くの新患を獲得できることになります。
Webサイトへの投資は「広告に代わるもの」ではなく、**「広告をより効率よく機能させるための基盤」**です。広告費をかけているほど、その土台となるWebサイトの質が収支に影響します。
まとめ
集患にかかるコストを整理すると、次のようになります。
- 広告経由の新患獲得コストは、1人あたり15,000〜25,000円以上になるケースがある
- 保険診療の初診診療報酬は5,000〜12,000円程度が目安であり、初診だけでは広告費が上回ることもある
- Webサイトの転換率を改善することで、同じ広告費でも獲得コストを大幅に下げられる
- 良いWebサイトは「広告の代替」ではなく、広告の費用対効果を高める基盤になる
「広告を出しているから集患できている」という状態は、コストが見えにくいだけで、患者さんを獲得するたびに相応の費用が発生しています。まず現状の広告費と、クリックが実際に来院につながっているかどうかを把握することが、集患コストを見直す第一歩です。
ご不明な点やご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。現役医師とWebデザインの専門家の視点から、自院の状況に合った集患戦略をご提案します。