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2026-08-03

医療経営集患UX

新患は来るのに、続かない——通院中断をサイトで防ぐ

新患の数は数えているのに、「来なくなった人」は数えていない

月末に集計するとき、多くの院で見ているのは新患数とレセプト枚数でしょう。今月は何人の初診があったか、去年の同じ月と比べてどうか——ここは自然と気になります。

一方で、「3か月前まで毎月来ていたのに、この2回来ていない人が何人いるか」を把握している院は、そう多くありません。中断は、静かに起きるからです。クレームも解約もなく、ただ次の予約日に姿が見えないだけ。受付も「今日はお見えになりませんでしたね」で終わり、翌週にはもう話題に上りません。

しかし経営の観点で見ると、これは新患が減るのと同じか、それ以上に効きます。定期通院の患者さんが1人抜ければ、月1回来院していたなら年間12回分の診療が消えます。しかも、その穴を新患で埋めるには広告費がかかる。すでに来てくれていた人に通い続けてもらうほうが、獲得コストはゼロに近いのです。

中断は、例外ではなく日常的に起きている

数字で見ると、この現象の規模が分かります。

厚生労働科学研究の一環として作成された「糖尿病受診中断対策マニュアル」では、大規模研究(J-DOIT2)の結果などから、糖尿病患者の 1年あたりの受診中断率はおよそ8% と推定されています。同マニュアルでは、かかりつけ医における受診中断率が24.4%だったという報告や、クリニック通院患者で約1.5年間に8.1%が中断したという報告も紹介されています。

もう一つ、令和6年の国民健康・栄養調査では、「糖尿病を指摘されたことがある者」のうち現在治療を受けている者の割合は67.4%(男性73.1%、女性60.5%)でした。裏を返せば、指摘を受けた人のおよそ3人に1人は、いま治療につながっていないことになります。とくに30〜40歳代で、治療を受けていない者の割合が他の年代より高いことも報告されています。

これらは糖尿病に関するデータですが、定期的な通院や検査が必要な疾患であれば、構図は大きく変わりません。眼科の視野検査、歯科のメインテナンス、内科の血圧管理——「症状がないのに通い続けてもらう」必要がある領域は、どこも同じ課題を抱えています。

中断の入口は「不満」ではなく「忙しさ」

ここが最も重要な点です。通院をやめた人の多くは、院に腹を立てて去ったわけではありません。

先の受診中断対策マニュアルは、中断の理由として、治療の優先度への理解(仕事などで忙しいから)、疾患への認識の不足(体調がよいから)、そして医療費が経済的に負担であること、を挙げています。また、受診中断は男性で仕事を持っている人に多く、若年になるほど多い傾向があるとされています。

つまり、接遇を磨いても、待合をきれいにしても、この層は止まりません。彼らが直面しているのは「この院が嫌だ」ではなく、「今週も時間が取れない」「別に調子は悪くない」「今月は出費が重なった」という、来院を後回しにする三つの理由だからです。

裏返せば、この三つに対して院の側から先に答えを出しておけば、中断はある程度防げます。そして、そのうちのかなりの部分は、Webサイトで伝えられる情報です。

「時間が取れない」に、診療時間の書き方で応える

忙しくて来られない人にまず必要なのは、「いつなら自分でも来られるか」が一目で分かることです。診療時間の表だけでは、実はこれが分かりません。

受診中断対策マニュアルでも、時間にゆとりのない若年層には、診察までの順番や見込み時間が分かるようにすることや、受診時間の融通性を高めることが有効だとされています。これは院内オペレーションの話であると同時に、その運用を「知ってもらう」という情報設計の話でもあります。

「調子がいいから、もう行かなくていい」に答えるページを持つ

二つ目の理由——体調がよいから中断する、は、説明で埋められる余地が最も大きい部分です。

診察室では毎回「続けましょうね」と伝えているはずです。しかし患者さんは、診察室を出た瞬間から日常に戻ります。3か月後、症状が何もない状態で「今日行かなくてもいいか」と考えるとき、そこに院長の声はありません。

だからこそ、サイトに「なぜ通い続ける必要があるのか」を、疾患ごとに1ページずつ書いておく価値があります。書き方の差は、そのまま伝わり方の差になります。

読み手が知りたいのは「大切かどうか」ではなく「やめたら何が起きるか」です。ただし、不安をあおる表現や治療効果の断定は医療広告ガイドラインに抵触しうるため、事実の説明にとどめる書き方を守ってください。診察室で実際に使っている説明を、そのまま文章にするのが一番安全で、一番伝わります。

費用の見通しを、来院前に示す

三つ目の経済的負担は、院内では最も聞き出しにくい理由です。患者さんの側から「お金が厳しいので」とは言い出しにくく、結果として説明の機会がないまま来院が途切れます。

サイトなら、誰にも聞かずに確認できます。載せるべきは、正確な金額表ではなく見通しです。「3割負担の方で、月1回の再診と処方で1,500〜2,500円程度が目安です」「年に1回の血液検査を行う月は、これに2,000円程度が加わります」といった書き方であれば、実態から大きく外れず、患者さんの計画も立ちます。

あわせて、後発医薬品への変更に応じられること、費用について相談できることを明記しておきます。受診中断対策マニュアルでも、経済的負担が疑われる場合に、より薬価の低い薬剤や後発医薬品を考慮することが挙げられています。「相談していい」と書かれていること自体が、黙って来なくなる人を減らします。

一度途切れた人が、戻ってきやすい入口をつくる

中断が起きてしまった後の設計も、同じくらい重要です。しばらく通院していない患者さんには、再開しにくい心情があります。「あんなに言われたのに半年空けてしまった」「怒られるかもしれない」——この気まずさが、そのまま数年の空白になります。

受診中断対策マニュアルは、受診勧奨において「受診していないことを責めないのが重要である」とし、「お変わりありませんか?」「先生も心配していますよ」といった声かけを勧めています。勧奨の手段としては電話も郵便物も同程度に有効で、メールはとくに若年層に対して有効な手段となりうる、とされています。

サイト側でできるのは、この姿勢を先に見せておくことです。

追うべき数字は、新患数だけではない

今月から一つだけ加えるとすれば、「前回来院から予定を過ぎている患者さんの数」です。カルテシステムの検索機能でも、予約台帳の目視でも構いません。この数を月に一度眺めるだけで、院の状態の見え方が変わります。

そのうえで、御院のサイトを患者さんの目で開いてみてください。「仕事帰りに寄れる日はあるか」「症状がないのに通う理由は書いてあるか」「毎月いくらかかるのか」「久しぶりでも行っていいのか」——この4つに答えが見つからないなら、そこが静かに患者さんを失っている場所です。

FlagshipWorksでは、現役医師とWebデザインの専門家の視点から、診察室で毎回話している内容をサイト上の言葉と導線に翻訳する設計をお手伝いしています。新患は取れているのに患者数が伸びない、という手応えをお持ちでしたら、お気軽にご相談ください。

参考

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