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2026-07-31

医療UX集患

待ち時間そのものより、「あとどれくらいか分からない」が不満になる

「あとどれくらいですか」と聞かれる、午前11時の受付

朝から混み合った外来。待合室の椅子が埋まり、立って待つ方も出てきた頃、受付に一人、また一人と患者さんが近づいてきます。「あとどれくらいかかりますか」——スタッフは診察室の様子を確認して「あと3人ほどです」と答えますが、その間にも次の方が並びます。

このやり取り自体は数十秒です。ただ、同じ質問が朝から何度も繰り返されると、受付は本来の業務を細切れに中断されることになります。そして患者さんの側も、聞きに行かなければ状況が分からない状態に置かれています。

ここで注目したいのは、患者さんが尋ねているのが「早くしてほしい」ではなく「あとどれくらいか」だという点です。多くの患者さんは、診療にある程度の待ち時間が生じることを理解しています。耐えがたいのは、終わりが見えないまま座り続ける状態のほうです。だとすれば、打ち手は「待ち時間をゼロにする」ことだけではありません。

不満の第1位は、はっきりと「待ち時間」

厚生労働省の令和5(2023)年受療行動調査によると、外来患者が病院に対して「満足」と回答した割合は全体で64.0%、「不満」は4.4%でした。全体としては悪くない数字です。

ところが項目別に見ると、様子が変わります。「不満」と答えた割合が最も高いのは「診察までの待ち時間」で25.5%。「医師による診療・治療内容」の満足度が60.2%、「医師との対話」が62.0%と高水準であるのに対し、待ち時間だけが突出して不満を集めています。診療の中身には納得しているのに、待たされたことで印象を落としている——多くの医療機関で起きているのは、この構図です。

なお、この調査の対象は病院の外来・入院患者であり、診療所は含まれていません。ただ、待たされる側の心理そのものは規模によって大きく変わるものではなく、外来診療を行う医院であれば同じ傾向を前提に考えて差し支えないでしょう。

「予約制」と書くと、期待値が上がりすぎる

同じ調査で、外来患者のうち「予約をした」人は79.4%にのぼります。それでも診察等までの待ち時間は、「15分未満」が27.8%、「15分〜30分未満」が24.8%、「30分〜1時間未満」が20.6%。1時間未満が約7割ということは、裏を返せば残りのおよそ3割は1時間以上待っているということです。予約をしても、待ち時間がゼロになるわけではありません。

ここに、サイト表記の落とし穴があります。「完全予約制」「予約優先」とだけ書かれていると、患者さんは「予約した時刻に呼ばれる」と受け取ります。実際には急患対応や処置の長引きで前がつかえるのが日常ですが、その前提は伝わっていません。期待値が高いところから30分待たされるほうが、最初から「30分程度お待ちいただくことがあります」と知らされて30分待つより、はるかに強い不満になります。

書き方を一段具体的にするだけで、この差は縮まります。

正直に書くと敬遠されるのではないか、と心配される院長もいます。しかし実際には、あらかじめ知らされていた待ち時間は「そういうものだ」として受け入れられます。不満になるのは、説明されていなかった待ち時間のほうです。

混雑する曜日・時間帯を、先に公開してしまう

待ち時間対策として最も費用がかからず、効果が出やすいのが「いつが混むか」の公開です。院内では受付スタッフが経験的に把握しているはずの情報——月曜の午前、土曜の午後、連休明け、雨天時——を、そのままサイトに載せます。

たとえば「月曜午前と土曜は混み合います。お時間に余裕のある方は、火〜金曜の午後(14〜16時)が比較的お待たせせずにご案内できます」といった一文です。これは患者さんへの案内であると同時に、混雑の平準化にもつながります。時間の融通がきく方が空いている枠に移ってくれれば、混雑日のピークがわずかでも下がり、結果として全体の待ち時間が縮みます。

曜日・時間帯を色分けした簡単な表をアクセスページや診療時間の下に置いておくと、初診の患者さんにも一目で伝わります。厳密な統計は不要です。受付スタッフに「混む時間帯はいつか」を聞いて3段階(混雑・やや混雑・比較的空いている)で色を付けるだけで、十分に実用的なものになります。

待ち時間表示システムを入れる前に、確認したいこと

現在の待ち人数をリアルタイムでサイトに表示するシステムは、確かに有効です。ただし導入前に整理しておきたい点があります。

第一に、運用が回るかどうかです。呼び出し番号と連動していないシステムでは、受付が手動で更新することになり、忙しい時間帯ほど更新が止まります。「30分前の情報が表示されたまま」の状態は、情報がないより不信を招きます。

第二に、患者さんがその表示をいつ見るかです。すでに待合室にいる人より、これから家を出る人にこそ価値があります。であれば、待ち人数の表示は院内掲示だけでなく、スマートフォンで確認できる場所——サイトのトップページ上部やLINE公式アカウント——に置く必要があります。

第三に、その情報を見てどう行動できるかです。「今30人待ち」と分かっても、来院時間をずらしてよいのか、順番を保持したまま外出できるのかが書かれていなければ、患者さんは動けません。システムを入れるかどうかにかかわらず、まずは「混雑時に患者さんが取れる選択肢」を言語化することが先です。

待ち時間の「中身」まで案内する

どうしても待たせてしまう時間を、少しでも過ごしやすいものにする案内も、サイトに載せておく価値があります。

とくに問い合わせが多いのが外出の可否です。「受付後、順番が近づくまで外出いただけます。お呼び出しの2組前になりましたらお電話します」といった運用があるなら、それは明記すべき情報です。近隣に喫茶店や書店があるなら、アクセスページで触れておくと親切でしょう。小さなお子さん連れの方にとっては、おむつ替えスペースの有無や、待合に絵本があるかどうかが来院判断そのものを左右します。

同時に、待ち時間が生じる理由を一言添えることも効果があります。「お一人おひとりの状態を確認しながら診療しているため、混雑時はお待たせすることがあります」——この説明があるかないかで、待たされている時間の受け取られ方は変わります。自分の番になったときにも同じだけ時間をかけてもらえる、と分かるからです。

「待ち時間」ではなく「見通し」を管理する

外来の待ち時間を根本的に短縮するには、予約枠の設計や動線、人員配置といった院内オペレーションの見直しが必要で、Webサイトだけで解決できるものではありません。しかし、患者さんの不満の多くは待ち時間の長さそのものではなく、見通しの欠如から生まれています。ここはサイトで確実に改善できる領域です。

まずは一度、御院のサイトを患者さんの目で開いてみてください。「どのくらい待つのか」「いつなら空いているのか」「待っている間に外出できるのか」——この3つに答えが見つからないなら、そこが受付への質問と、待合での不満が生まれている場所です。

FlagshipWorksでは、現役医師とWebデザインの専門家の視点から、院内の実際の混雑状況をどう言葉と画面に落とし込むかを一緒に設計します。待ち時間についての問い合わせや口コミが気になっているようでしたら、お気軽にご相談ください。

参考

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